フィルムシミュレーションをRAWで再現する方法【Lightroom数値公開】

ミラーレスカメラ、ストロボ、三脚、ブロワー等の撮影機材を木製デスクに並べた俯瞰写真 写真・3Dプリント
出典: 写真AC

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富士フイルムの「フィルムシミュレーション」に憧れているけれど、機材一式を入れ替える踏ん切りがつかない方へ。結論として、RAWからLightroomやCapture Oneで7〜8割は再現できます。本記事では、Ektar、Classic Chrome、Velvia、Astia、Acrosの5種類を、HSLパネルの8色すべて + トーンカーブ + カラーグレーディングまで含めて、数値レベルで分解した方法を紹介します。

カメラ・ストロボ・三脚・ブロワーを並べた撮影機材一式

結論早見表(代表5種類)

シミュレーション 特徴 主な操作
Ektar 100 風 鮮やかな彩度、温かみのある肌 HSLでオレンジ/レッド強化、ハイライト圧縮
Classic Chrome 風 抑えたコントラスト、シアン寄りの影 カーブ浅S字、シャドウをティール寄せ
Velvia 風 強い彩度、深いシャドウ 彩度全体上げ、グリーン色相シフト
Astia 風 柔らかい肌、低コントラスト コントラスト下げ、肌色彩度のみ上げ
Acros 風(B&W) 富士の銘モノクロ、粒状感あり カラーミキサーで黒の比率調整、粒状追加

Ektar 100 風の完全数値レシピ

基本補正

  • 色温度: 5,800K(±200)
  • 色かぶり: +5(マゼンタ寄り)
  • 露光量: 0.0(撮影時に合わせ済み前提)
  • コントラスト: +15
  • ハイライト: -30(白飛び防止)
  • シャドウ: +15(暗部持ち上げ)
  • 白レベル: +10
  • 黒レベル: -10
  • 明瞭度: +5
  • かすみの除去: 0
  • 自然な彩度: +15
  • 彩度: +5

HSL / カラー(色相 / 彩度 / 輝度)

色相 彩度 輝度
レッド +3 +5 0
オレンジ +5 +10 +5
イエロー 0 +5 +10
グリーン -15 -10 0
アクア -10 -10 0
ブルー -5 0 -5
パープル 0 -5 0
マゼンタ +5 0 0

トーンカーブ(RGBチャンネル)

  • シャドウ域(入力 32): 出力 28(やや沈める)
  • 4分の1(入力 64): 出力 64(中点維持)
  • 中間(入力 128): 出力 130(微増)
  • 4分の3(入力 192): 出力 190(微減)
  • ハイライト(入力 232): 出力 220(圧縮)

この浅いS字 + ハイライト圧縮で「フィルム的なロールオフ」を作ります。

カラーグレーディング

  • シャドウ: 色相 30(温色寄り)、彩度 5
  • 中間調: 色相 20、彩度 3
  • ハイライト: 色相 50(黄味)、彩度 5
  • ブレンド: 50、バランス: +5

ディテール / 粒状

  • シャープネス: 量 40、半径 1.0、ディテール 25
  • ノイズ軽減: カラー 25、ディテール 50
  • 粒状: 量 25、サイズ 30、粒度 50

Classic Chrome 風の完全数値レシピ

基本補正

  • 色温度: 5,500K
  • 色かぶり: -3(グリーン寄り)
  • コントラスト: -5
  • ハイライト: -10
  • シャドウ: +5
  • 白レベル: 0
  • 黒レベル: -5
  • 明瞭度: +10
  • 自然な彩度: -10
  • 彩度: -15

HSL / カラー

色相 彩度 輝度
レッド -5 -15 +5
オレンジ -5 -10 +5
イエロー -10 -15 0
グリーン +10 -20 -5
アクア 0 -10 -5
ブルー -10 +5 -10
パープル 0 0 0
マゼンタ 0 0 0

トーンカーブ(青チャンネルでシャドウを青寄せ)

  • 赤チャンネル: シャドウ域を5下げ、ハイライト域を維持
  • 青チャンネル: シャドウ域を8上げ(青寄せ)、ハイライト域を3下げ

カラーグレーディング

  • シャドウ: 色相 220(青)、彩度 10
  • 中間調: 色相 200、彩度 5
  • ハイライト: 色相 50、彩度 5
  • ブレンド: 50

ディテール / 粒状

  • シャープネス: 量 50、半径 1.0、ディテール 30
  • 粒状: 量 20、サイズ 25、粒度 50

Velvia 風の完全数値レシピ

基本補正

  • 色温度: 5,400K
  • 色かぶり: +3
  • コントラスト: +25
  • ハイライト: -15
  • シャドウ: -30
  • 白レベル: +10
  • 黒レベル: -15
  • 明瞭度: +15
  • かすみの除去: +10
  • 自然な彩度: +20
  • 彩度: +25

HSL / カラー

色相 彩度 輝度
レッド 0 +15 -5
オレンジ 0 +15 0
イエロー -5 +10 +5
グリーン +10 +20 -5
アクア +5 +15 -10
ブルー 0 +15 -15
パープル +5 +10 -5
マゼンタ 0 +10 0

トーンカーブ

  • 強めのS字: シャドウ域 -10、ハイライト域 +5
  • 赤チャンネル: ハイライト+5(夕焼け感)
  • 青チャンネル: シャドウ-5(深い青)

ディテール / 粒状

  • シャープネス: 量 60、半径 1.0、ディテール 35
  • 粒状: 量 10(風景はほぼ無粒状)

Astia 風(柔らかい肌・ポートレート向け)

基本補正

  • 色温度: 6,000K
  • コントラスト: -15
  • ハイライト: -25
  • シャドウ: +25
  • 明瞭度: -10(肌の柔らかさ重視)
  • 自然な彩度: +5
  • 彩度: -5

HSL / カラー(肌色を中心に)

色相 彩度 輝度
レッド +5 -5 +10
オレンジ(肌色) +8 +5 +15
イエロー 0 0 +10
グリーン 0 -15 +5
ブルー 0 -10 +5

カラーグレーディング

  • シャドウ: 色相 30、彩度 5(薄い温色)
  • ハイライト: 色相 40、彩度 8(クリーミーな白)

Acros 風(高品位モノクロ)

基本補正

  • 白黒モード: ON
  • コントラスト: +20
  • ハイライト: -20
  • シャドウ: -15
  • 白レベル: +15
  • 黒レベル: -15
  • 明瞭度: +10

白黒ミックス(各色のグレースケール変換比率)

明度シフト
レッド +15(肌を明るく)
オレンジ +20
イエロー +10
グリーン -10(葉を暗く)
アクア -25
ブルー -30(空を強く沈める)
パープル -20
マゼンタ -10

カラーグレーディング(モノクロ + 微温色)

  • シャドウ: 色相 30、彩度 4(微温)
  • ハイライト: 色相 60、彩度 3(クリーミー)

粒状(Acros最大の特徴)

  • 粒状: 量 50、サイズ 35、粒度 60

Acrosの粒状は、デジタルノイズと違って「四角ではなく丸い粒」が理想です。Lightroomで粒度を50超に上げると、より銀塩らしい雰囲気が出ます。

共通の注意点

  • レンズプロファイル補正:必ずONに(歪み・周辺光量補正)
  • WBは撮影前に整える:RAWでも色温度がズレすぎると再現精度が落ちる
  • 肌色を最優先で確認:オレンジの色相 +10超は不自然
  • シーンごとに微調整:同じプリセットの数値を全シーンに当てない
  • HEIFやJPEGでなくRAW必須:JPEGからの後処理は色破綻しやすい

フィルムの勘所:ワンポイントアドバイス

数値だけ追っても、フィルムらしくならないことが多いです。ここからは「撮影時から意識すると後処理で楽になる」勘所を、3年フィルム調を作り続けた経験からまとめます。

1. 露出はオーバー気味に撮る(ハイライト粒状を出す)

フィルムの魅力は「ハイライトの粘り」と「やや明るめの中間調」。デジタルは黒つぶれを避けるためにアンダー目に撮りがちですが、フィルム調を目指すなら+0.3〜+0.7段オーバーに撮るのが正解です。後処理でハイライトを-30程度に下げると、粒状が美しく乗ります。

2. 光は「正面」より「サイドから45度」

フィルム調が映えるのは、軟らかい斜光です。逆光や正面光は、コントラストが暴れて再現が難しい。曇天や朝夕の斜光が、後処理の味方になります。日中順光で撮ったRAWはフィルム調にしづらいので、撮影タイミングから意識を変えると劇的に変わります。

3. WB は「やや暖色」を出発点に

厳密な白を再現しようとせず、色温度を実測+200〜500K(暖色寄り)で撮ると、現像時に温かみを作りやすいです。「白を白く」より「全体に統一感のあるトーン」を優先するのがフィルム的発想。

4. 完璧を捨てる、80点で揃える

1枚を100点に仕上げるより、10枚を80点で揃える方がフィルムらしさが出ます。フィルムは1本36枚撮りで、すべて同じ色味でした。デジタルでもプリセット化して全カットに同じ味を載せると、作品集としての一貫性が生まれます。

5. 粒状は「サイズ > 量」

粒状の量を多くするより、サイズを大きめ(30〜35)、粒度を高め(50〜60)にする方が、銀塩フィルムらしい質感になります。量を上げすぎるとデジタルノイズに見えるので注意。

6. シャドウの色を決める

フィルムごとの個性が一番出るのは「シャドウ域の色」です。Ektar は温色、Classic Chrome は青寄り、Velvia は青黒、Acros はやや温色寄りのモノクロ。カラーグレーディングのシャドウ色相を最後に決めると、フィルムらしさが定着します

7. 1〜2割の「滲み」を残す

シャープネスを上げすぎず、明瞭度も控えめにすると、フィルム的な柔らかさが残ります。HEIF/JPEG時代のクッキリ補正は、フィルム調と逆方向です。

8. 機種を変えても「自分の色」を作れる

カラーチェッカー(X-Riteなど、約¥10,000)で機種ごとのカラープロファイルを作っておくと、Sonyで撮ってもNikonで撮っても同じ色に揃えられます。「カメラの色」ではなく「自分の色」を作れるようになると、機種変更のたびに色作りをやり直す必要がなくなります。

9. プリセットは「3本だけ」に絞る

シミュレーション全部を作るのではなく、自分のスタイルに合う3本を選んで使い分ける方が、作品全体の統一感が生まれます。私は Ektar(屋外)/ Classic Chrome(室内)/ Acros(モノクロ)の3本でほぼ完結しています。

10. RAWで撮って、JPEGも残す

富士機を借りる機会があれば、RAW + JPEG設定で撮ってきて、JPEGの色を参考に自分のプリセットを調整するのが最速の学習法です。完璧な再現は不可能ですが、何が違うかを目で確かめると、調整方向が一気に見えるようになります。

機種別の補足

カメラ RAW現像のコツ
Sony α7C / α7IV WBが寒色寄りなので、色温度+200を出発点に
Canon EOS R系 肌色が標準で温かいので、オレンジ彩度は控えめに
Nikon Z系 緑が強めなので、グリーン彩度を-10で出発
Panasonic / OM SYSTEM シャドウが沈みがちなのでシャドウ+を強めに

同じ作業を月100回行う方へ(エンジニア向け)

色変換ロジックを自動化したい場合、darktable(OSSの RAW現像ソフト)で LUT(Look-Up Table)を作成すれば、Lightroom以外のソフトでも使えます。PythonのcolourScience ライブラリで HSL変換の数式を組めば、撮影後のRAWを一括処理することも可能です。

クラウド上で大量処理するなら、Replicate 経由で Stable Diffusion の ControlNet と組み合わせて画像生成側でフィルム風味を後がけする方法もあります。AWS Lambda + S3 で RAW を自動現像する仕組みも検討の価値あり。

まとめ

フィルムシミュレーションは「色相・彩度・カーブ・粒状」の組み合わせです。完璧な再現はできませんが、本記事の数値を出発点にして7〜8割の雰囲気は作れます。富士機材を買う前に、まず手元の機材で1週間試してみると、買うかどうかの判断材料になります。

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